「ふざけんな浜田アアァァ!!」
自室の壁に枕を思いっきり投げつける。
ボスンッと鈍い音がして枕は床に落ちた。
こんなことをして気が晴れる訳でもなく、ただ虚しさが心に満ちただけだった。
「んでだよ・・・」
あと数分で日付が変わる。
もうすぐ終わってしまう・・・・
一年にたった一日だけのオレの誕生日――・・・
『泉、本当に悪いっなんか急に店長がたおれちまって・・・今日行けなくなった。』
今日はオレの誕生日で、珍しく親父とお袋がどっか旅行行って、
兄貴もここぞとばかりに今日は帰って来ねぇ。
だから今日は浜田が家に泊まりに来るハズだった。
オレも楽しみにしながら、浜田が来るのを心待ちにしてた。
そんな中、一本の電話が来た。
その内容はオレの期待を裏切るようなものだった・・・・・
「・・・は?」
『だから、今日急にバイト先の店長がたおれちまって、急遽行けなくなった。』
ふざけんなよっ!!
どんだけオレが楽しみにしてたと思ってんだよ!?
んなの断れよっ!
「・・・・ふーん」
『泉、マジで悪ィ・・。ゴメンな・・・?』
「・・・別に。もう今日来なくていいから。」
『えっオイ泉!?』
一方的に電話を切る。
言いたいことを素直に言えないオレに腹が立った。
オレよりバイトなんかのがいいのかよ。
オレはお前と居たかったのに、
お前は違ったワケ?
オレの気持ちに気付けよ、馬鹿――・・・・
あれからずっと部屋にこもってた。
メシも、フロも、なんか全てがダルかった。
時計の針は11時59分を指していた。
あと一分。
一分で、一日は終わる。
そう思うと無意識にカウントダウンをし始めていた。
「59、58、57、56、・・・・」
そんなことをしても虚しさが募るばかりなのに――・・・
頭ではそんなこと分かってた。
でも止められなかった。
「49、48、47、46、・・・・」
もしかしたら、浜田が来るんじゃないか・・・?
そんな淡い思いを抱えて、ひたすら数字を言い続ける。
「39、38、37、36、・・・・」
「29、28、27、26、・・・・」
ごくりと唾を飲み込む。
「19、18、17、16、・・・・」
いつの間にか手は汗で湿っていた。
「・・・・10」
「・・・・9」
「・・・・8」
「・・・・7」
「・・・・6」
服をぎゅっと握りしめた。
「・・・・5」
「・・・・4」
風の音が聞こえた。
「・・・・・・・・・・3」
ゆっくり瞼を閉じた。
「・・・・・・・・・・・2」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1」
耳をすませても、何も聞こえない。
ゆっくりと目を開けた。
馬鹿馬鹿しい。
浜田が来る訳ねぇだろ・・・。
本当、何やってんだか・・・・・・・・・。
すっと目から涙がこぼれ落ちた。
馬鹿だな、こんなこと最初から分かりきったことじゃねぇか。
なのに、
何で、
何で、この悲しみが収まんねぇんだよ・・・・・。
涙は止まることなく、頬を伝ってゆく。
もう何も考えたくなくて目を閉じた。
早く現実から目をそむけたかった。
ごんごんっ
鈍い音で目を覚ます。
嗚呼、オレあのまま寝ちまったんだ――・・・
ごんごんっ
音のする方へ目を向けると、
そこには、窓越しに浜田が居た。
「・・・・今更何の用だよ。」
窓を開け、冷たい目で浜田を見つめる。
「泉・・・・本当に悪かったっ!!」
目の前で浜田は腰をかがめ、謝った。
「来なくていいっつったろ・・・」
「いや・・・・・泉に謝りたかったから、オレ――・・・」
其の言葉を聞いた途端。ぷつりと何かが泉の前で切れた。
「・・・どーせ浜田はオレよりバイトのが大事なんだろっ!?だから今日だって約束ほっぽってバイト行ったんだろ!!」
「泉、それは・・・・」
「ふざけんなよっ!!オレがどんだけ楽しみにしてたかわかってんのかよ!?オレが・・・オレが、もしかしたら浜田が帰ってくるかもしれないって思ったことわかってのかよっ!?」
「・・・・泉・・。」
「・・・・・どんだけ寂しかったと思ってんだよ、どんだけ、・・・悲しかったか、わかってんの・・・かよ・・・・?」
目頭が熱くなった。
途端、オレは浜田に抱きしめられた。
「・・・・っっ離せよっ!!!」
「絶対離さない」
そう言って、浜田は力をいれたからオレは身動きがとれなくなった。
「・・・・・泉、本当に悪かった。」
ぽつりぽつりと、浜田は話し始める。
「オレは、バイトなんかより泉の方が全然好きだし、愛してる。」
「・・・・んじゃあ、んで今日は・・・・」
声を振り絞ってオレは言った。
「コレ・・・・・」
浜田はポケットの中から小さな包みを取り出した。
「コレを泉に渡したかったから・・・・」
「本当は昨日までで買えるはずだったんだけど、店長がたおれちまって・・・・給料ももらえなくてさ。結局やっと貰えて店まで行ってここまで走ってきたんだけど・・・・間に合わなかった。」
そう言ってオレにその包みを握らせた。
「オレが愛してるのは泉だけだから。」
「・・・・・馬鹿。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・おう。」
「・・・クサイんだよ、阿呆。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・でも、嬉しい。」
「・・・・うん。」
「・・・開けるぜ?」
「おう。」
綺麗な包みを開けると、それは
「・・・・・ネックレス?」
「おう。泉がオレのって印」
「・・・・・おもいっきり女モンじゃねぇか、馬鹿」
「え!?マジ!?」
慌てふためいてる浜田を見たらなんだか笑えてきた。
「・・・・来年。」
「ん?」
「・・・・・来年はずっと一緒にいろよ」
「おう。」
「じゃなきゃコレ捨てる。」
「ああああっ!!約束、約束すっから!!」
くすりと笑って耳元で囁いた。
オレも浜田を愛してる。
(い、泉?もう1回!!)(調子に乗んな!!)
遅れてゴメンいずみん!!
初☆ハマイズ書きだったり・・・・